同期会 クラス会 掲示板

D氏の憂鬱
11期 だーやま
(2008/10/18 20:00:04)
ある秋の金曜の午後、霞ヶ関の某省庁に向かうD氏(41才)は憂鬱であった。今週3回目の霞ヶ関詣。役人同士のミスコミュニケーション、朝令暮改に振り回された1週間であった。D氏はある法律改正に伴う社内規程の変更を国に承認させなければならなかった。(今日こそ、この案件を通さねば、我が社は法違反を犯すことになってしまう…)
人一倍コンプライアンスに対する意識の高いD氏は強い意志と固い決意を持って、某省某局某課のある×階に向かった…。
この日の夕方、何時間にも及ぶ粘り強くタフなネゴシエーションの末、頭の固い木っ端役人どもに自らの案件を承認させたD氏の心は軽やかであった。(フーッ、これでようやく心の重荷が取れたというものだ。今週末も安心して眠れるな。確か明日は我が子の運動会であったか。子供の笑顔を見るのが今から楽しみだ)
愛する家族の姿が脳裏をよぎったが、D氏は軽快にその足を有楽町に向けた。高校時代のクラスメイトM氏(文化祭実行委員長)とE氏(学級委員長解雇済)と久しぶりに杯を交わすこととなっていたからだ。(彼らと飲むのは何年ぶりになるだろうか)
週末の有楽町は人々の賑わいで溢れている。庶民の消費意欲は旺盛だ。(我が国の景気が悪いなどと本当かな)
D氏はそんなことを考えながら、ふと街の一角に目を向けた。若者の集団が楽しげに騒いでいた。(学生さんか?)
有楽町に学生とは似つかわしくないな、などとも思ったが、D氏はそんな若者を見るのが好きだった。(若者はいい。夢と希望に満ち満ちている。私などと異なり恐れるものも、守るべきものもなくて羨ましいものだ)
D氏はほおを緩めてそんな若者たちを羨ましげに見つめながら、19年前のある出来事を思い出していた。(あれは確かおよそ20年前の秋、私がまだ大学3年の頃であったか…)
1989年、時代が昭和から平成に変わり、
( http://jp.youtube.com/watch?v=Vj_xHUDQR1Q&feature=related )
平成という言葉も使い慣れてきたある秋の払暁のことであった。当時大学3年生のD氏(当時はYクン)は大学の友人と学芸大学周辺で明け方まで痛飲し、横浜の自宅に帰宅するために東急東横線の学芸大学駅で始発を待っていた。
Yクンは駅の時刻表に目をやった。始発は5時10分頃の各駅停車、特急は5時40分過ぎであった。(しょーがねーから各停の始発に乗るか)
Yクンはやってきた始発に乗り込んだ。始発であったため、乗客は数人程度であった。Yクンは若いとはいえ、完徹で疲れていた。シートに座るやいなや強烈な睡魔に襲われ目を閉じた…。
…ざわざわ、ざわざわ、周囲の騒々しさにYクンは目を覚ました。(あれ?乗客こんなにいたか?う〜ん、オレ今どこにいるんだろう?)
Yクンは状況確認のため周囲を見渡したが、電車は混雑しており、にわかには状況判断が出来なかった。すると東横線は次の駅に到着した。「代官山、代官山〜、次は中目黒〜」
(!!ちょ、ちょ、ちょっ、まっ!!いま、代官山で次が中目黒???えっ?オレ学芸大学から桜木町目指してんだろ?こんなとこにいるはずないじゃん!!)
Yクンは頭が混乱し、自分がどこにいるのかを探した。向かいのホーム 路地裏の窓 こんなとこにいるはずもないのに (http://jp.youtube.com/watch?v=Tvos4SDJacU&feature=related )
しかし、若いながらも、あなたとは違い、自分自身を客観的に見ることが出来るYクンはすぐに状況を把握した。(やっちまったなー、桜木町行って折り返して、渋谷でもまた折り返しちまったのかあ。まあ、今さらジタバタしてもしょうがねえな。)
何で駅員は起こしてくんねーんだよ、などと心の中で毒づきながらも、状況が確認できて安心したYクンは再び訪れた強烈な睡魔に抗うことが出来なかった…。
…ざわざわ、ざわざわ、周囲の騒々しさにYクンは目を覚ました。(また寝ちまった。あれ?う〜ん、オレ今どこにいるんだろう?)
Yクンは状況確認のため周囲を見渡したが、電車は混雑しており、にわかには状況判断が出来なかった。すると東横線は次の駅に到着した。「代官山、代官山〜、次は中目黒〜」
(!!ちょ、ちょ、ちょっ、まっ!!いま代官山で次が中目黒???えっ?デジャブ?オレ学芸大学から桜木町目指してんだろ?夢の中でもこんなとこにいるはずないじゃん!!)
Yクンは思った。(オレは明け方の桜木町にいるはずで、こんなとこにくるはずもないのに)……
(あの頃は私も恐れるものも、守るべきものも無かったな)D氏は苦笑いをし、若者たちに背中を向けて待ち合わせ場所に向かった。
結果、この日最終的に3件目の店を出たのは、まだ夜も明けやらぬ5時であった。E氏は予定通り30分遅刻し、その後も妄言、暴言、戯言し放題、筆舌に尽くしがたいものであったが、それはそれで楽しい時間を過ごしたものであった。(結局、EもSも変わっていなかったな。人は変わっていくとララアは言っていたけどな…、結局変わってしまったのはこの私だけか)
フッとD氏は軽く自嘲気味にため息をついた。しかし、M・E両氏が相変わらずであったことは彼にとって決して悪い気分ではなく、変わらぬ彼らを少し羨ましく思い、むしろ軽い気分になった。
現在は神奈川県民であるD氏はJR有楽町駅の品川方面のホームの階段を昇った。そしてホームに入ってきた薄緑色のラインが入った電車に乗り込んだ。(さあ、SHOWは終わりだ。我が家に帰りいつもの日常に戻ろう。今日は確か我が子の運動会であったか)
5時過ぎの電車は他の乗客も少なく、D氏は容易に座ることが出来た。D氏は愛する家族やペットのことを思い浮かべ、瞼を閉じた。するとその時、眠りの神ヒュプノスがD氏の下に訪れた。既に41才のD氏は完徹明けで体力が著しく落ちており、眠りの世界にいざなわれてしまった。
…ざわざわ、ざわざわ、周囲の騒々しさにD氏は目を覚ました。(はっ?はて?こんなに他のお客さん乗っていたものだったかな?ん?私は今どこにいるのだろうか?)
若かりし頃よりもより客観的に自分を見ることの出来るD氏は状況確認のため周囲を見渡したが、その必要はなかった。すぐに山手線が次の駅に到着したからだ。
「東京、東京〜」
オロローン(゜д゜)
かつてララアは言った。人は変わっていくもの…。
http://www.nicovideo.jp/watch/nm3368328
※このものがたりは主にノンフィクションです。

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